世界映画紀行 - World Express Vol.16

(特別番外編)

札幌シネマ・ナウ&ゼン(後編)

Sapporo Cinema Now and Then Part 2

文と写真とイラスト:ゆえひさ

Text, Photo and Illustrations by Yuehisa

(2003/05/19)

 


ゆえひささんのレポートによる、変貌する札幌映画事情レポート。その後編は、今回の駅再開発によって「ステラプレイス札幌」内に誕生した巨大シネマ・コンプレックス、「札幌シネマ・フロンティア」を実際に見ての全貌紹介です。ただし前編と同じくお堅いこと抜きのゆえひささん流、楽しいイラスト付きで紹介をしてくださいました。


札幌シネマ・ナウ&ゼン(前編)はこちら

 

 

札幌シネマフロンティアるぽ!

 

●ロード・トゥ・パーテーション●
 その噂は20世紀も大詰めの頃,まことしやかに流れて来た。

「札幌駅に関西の大丸デパートが入るんだってよ」
「中にシネコンが入るんだって」

 札幌駅構内に縦横無尽にはり巡らされたパーテーションの奥で「ガー!ドンドンドン!ゴンゴン!」なんてやってたのはそのせいか…しかしシネコン?もうサッポロにあるじゃん〔ユニバーサルシネマ11〕(注1)が。ここだって開館当時,2・3度行ったっきり。市内にこれだけ映画館あるもの,今更シネコン出来ても採算あわないんじゃないの?正直,シネコンにはあまりいい思いを抱いていなかった自分にとっては,興味のある話ではなかった。

 そして21世紀が明けた。

 「2003年春・大丸」のサインが地下鉄札幌駅構内に目立ち始め,迷宮のようなパーテーションも次第に陰を潜め,代わりに新iMac(白いやつ♪)を従え,ステラプレイスカードなるものの勧誘コーナーが目につくようになっていた。新しいモノが来るのはなんにせよウキウキするね,などと呑気な心持ちでいた自分に,衝撃的事実が突きつけられることになる。

●サッポロ・シネマ・コンフィデンシャル●
 松竹遊楽館・札幌東映・2003年3月末,東宝日劇2003年夏・閉館。3館とも老舗中の老舗,サッポロの顔の映画館である。
(詳細は【おもひで】にて)

 なんでも今度,駅に出来る映画館は松竹・東映・東宝3社初の協力体制の元に展開する,とにかく規模のデカいモノらしい。そうなると,客の取り合いを防ぐためにご老体には引退願おうと…まぁ自然の成りゆきではあるわな。しかし,己の社名の冠ついた老舗わざわざ潰してまで駅舎内施設にシネコン建設して,地方客をも取り込む気なんだろうか。これからは地方の時代だ!とか言ってて,そういうことするか?普通…

 世間が巨大商業施設開業に浮かれるのとは対称的に,わだかまりともしこりとも言えるようなモノを懐きながら,それでもまだ,変わらないコトも期待しつつ迎えた2003年・初春。

 <JRタワー・ステラプレイス>各施設及び<札幌大丸>とも3月6日一斉開業の中,一人(?)〔シネマフロンティア〕は2月22日公開『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』に合わせてプレ・オープンなどという,いかにも「カチッ」と来る客寄せ戦略をおったてた。へそ曲がりの腹の中には増々不信感が募る。
 んが。『007/ダイ・アナザー・デイ』は最早都心部ではここでしかやらないのだ…ぅうううう〜ぬむむむ…背に腹は変えられぬ。まるで親の敵に会いに行くような心境で,3月中旬,道内各地からの客で大盛況の<JRタワー・ステラプレイス>へと向かったのだった。近づきつつある春の陽気と人の熱気でむんむんの場所に。
 やだなぁ,混んでんの…

 札幌駅を真正面から見上げるのなんて久し振りである。もう何年も工事用の被いや鉄骨に囲まれていて,駅舎がどんなだったかも忘れそうになっていたしなぁ。通り行く人はそんなことに構ってる素振りもない。うんうん。こぎれいになった。なったのはいいけど…

 じっくり見ていると,心の奥底でもぁもぁと疑問符が沸いてくるのだが…うーん,そうか…皆,立ち止まらないでさくさく駅舎内に入ってしまう理由が,何となく判って来たぞ(汗)

 さて。
〔札幌シネマフロンティア〕は<ステラプレイス/センター>の7Fにある。

 「札幌駅南側東口コンコースの<ステラプレイス/センター>内の東側エレベーターで7F直行」
 といったところでどこが<ステラプレイス/センター>なのだっ!それまで,あちこちベニヤで仕切られた迂回路だらけの構内だったのが,駅構内・<パセオ><アピア>(既存ショッピングモール)と繋がり,おまけに<ステラプレイス>は<センター>と<イースト>があるという。しかもわたしゃ方向音痴なんだってばよ。
 フロア内のあちこちに置いてある施設案内パンフレットをぐるりと見回して判ったのは「東口コンコースには赤いオブジェがある」ことだった。
 あ,←これね(注2)。はいはい。ちょうどいるところだよ。良かった一安心。
 至る所が行列だらけで,エレベーターも類にもれず大混雑。物見遊山はまた今度。せっかちな自分はエスカレーターで7Fまで昇ることにした。ぐんぐんと昇っていくと,薄暗い空間と,あま〜い匂いの立ち篭めるフロアが目の前に出現した。

 ここだ。〔札幌シネマフロンティア〕

 

●ステラ・デ・シネマ●
 シネマフロンティア。全体構図はこんな感じ↓

 “東宝・松竹・東映,初のコラボレーション。道内最大規模12スクリーン・2,705席(館内パンフレットより)・定員入替制・座席指定”の割にそんなに広く感じないロビーがエスカレーター昇り口真正面に広がる。十二宮星座と思しき飾りの入ったガラスのパーテーションが劇場までの通路を区切っており,閉塞感は感じない。
 見上げれば上映中&次回上映作品の予告編を流している画面→

 異様に光を放ったピカピカ売店に,フロアにはガラス玉が敷き詰められたタイル。映画館の趣というより,どっかのアミューズメントパークみたいでどうも落ち着かないねぃ。

[ロビースクリーン]

 ま,とりあえず観てみないことには始まるまいと[Tickets]へ。

 混雑時を想定してか,キャッシュコーナーのような整列用のポールとロープがあって,真正面からカウンターへはたどり着けないのだった。「そんな大入りでもあるまいに大層な…」とぶちぶち胸の中で呟きながら,戸惑うおばはん連中を尻目にチケットを購入。
 何時の回とか指定しなきゃいけないのか…もうすっかりシネコンのシステムなんて忘れ去ってしまっていたので,今一つ要領を得ない自分。館内パンフレットで確認したところ,前売券を持っていても,一旦チケット売場で入場(当日)券と交換しなければならないそうだ。上映10分前より劇場入りを開始するので,しばしロビーで待てという。

 

 シネコンテ ミンナコウナノ? ナントモ メンドクサイネェ。

 ちなみにシネマフロンティアでは新売券制度が存在する。毎週水曜日にその週の土曜日〜翌週金曜日までの入場券を先買い出来る制度で,例えば毎月1日のファーストディのチケットを前もって買っておこう,とすると,ファーストディ割引が購入時に適応になるらしい。但し,作品名・日時は必ず指定で,原則払い戻しは不可。これって前売よりお得感,あるよね。

 こばらも空いてきたのでピカピカ売店[Concession]で何かつまもうと物色。館内案内・放送でものべつ「[Concession]以外の飲食物の持ち込みはご遠慮下さい」とある。通常ならそんな遠慮はしないけど,新館ご祝儀だよ。ポップコーンにソフトクリーム,ソフトドリンクにフライドポテトと,ラインナップは他の映画館と大差はないね…とメニューに目を走らせると,んんん?“ザンギ(注3)”とな!何故にザンギ。ここは居酒屋か?確かにビールもメニューにはあるが…とロビーを見渡すと,おおお〜居たよ〜文字通り紙コップに入った“ザンギ”を楊子でつまんで食べている人が〜!こんなところで道内色を出そうという心意気にちょっと感激する。
 その右隣には[Premiumshop]ここでパンフレットやグッズ・前売販売をしている。

[Concession]

[Premiumshop]

 結局ザンギではなく,値段(\250)の割にボリューム満点のソフトクリームをびろびろなめながら,あちこちに点在するチラシラックを物色。よく,売店カウンターなんかにチラシをまとめて置いてあるところがあるけど,あれ,ちょっと取るの気後れするんだよな。こりゃ入れ食い入れ食い。…次回上映に韓国映画『二重スパイ』や『ボイス』ね…ふーん。
 あれれれ『Taxi3』…『KillBill』もやんの?シネコンなのに(笑)

 溶け溶けのソフト片手に挙動不振な行動を繰り返していると,館内放送がロビーに響き渡った。

●ボンド・北のフロンティア潜入●
 「お待たせ致しました。18時から上映の『007/ダイ・アナザー・デイ』入場を開始致します。チケットをお持ちの方は,劇場入口までお越し下さい。」

 各館へは[Theater]から。ここで全館のチケットをもぎる。何となく空港の搭乗口を彷佛とさせるね。これ,上映時間が重なったら騒然としそう。
 ここから二股に分かれ,左手が1〜5番シアター,右手に7〜12番シアターへと続いていく(6番シアターは入口真正面)
 各館入口には上映作品タイトルのサインがパカパカ点滅しているが,2・3度来たくらいじゃ判り辛い。案内のおねぃさんがこっちこっちと手招きする。

[1〜5番シアター側通路]

[7〜12番シアター側通路]

 館内には新しい建物独特の匂いが充満していた。んー(喜)一つ,深呼吸。スクリーンからかなり距離が保たれた座席設定。ちびっこはそれ,とばかりに最上段のど真ん中を確保。最前列はどんな見え方がするんだろう。
 上映開始まで,場内には静かにBGMが流れ,スクリーンには企業CFやシネマフロンティアの案内が映し出されている。おまけに「上映まであと約7分」とカウントダウンまで(笑)…そういえば,新聞投書欄で「映画館で無理矢理見せられるCMはけしからん。」なんておっさんの投稿があったのを思い出したけど,これならそのおっさんも納得するかな。

 ところで,シネマフロンティアは道内最大級のキャパシティの他,国内最高環境の設備が売りだそうな。“日本で初めてTHXシアターにDLP導入(館内パンフレットより)(注4)”…ってなんのこと???永遠のシネマシロウトを自認する自分にはさっぱり判らない。車とか合板の名前みたいだなぁって程度なので以下,抜粋文を載せるので,判る方は「おぉ〜」「へぇ〜」と感心してね。
 “THXに二館が認定。DLP二台導入。8番シアターはDLPを導入したTHX認定館に。その特徴を活かすため,JBL Professional 3Wayスピーカーシステムを採用。5番シアターでは総数31本のスピーカーが迫力あるサラウンド感抜群のサウンドを提供。DLP,フィルム映写機共に米・クリスティ・デジタルシステムズ社製。各館に車椅子スペースとコトブキ社製のハイバックシート,合わせて2,705席”
 で,快適に映画を楽しませてくれるそう。ふーん……やっぱり,よく判んないや(コラ)

 静々と場内が暗くなっていく。いよいよ,本編の始まりだ。

[スクリーン]

[スクリーン〜休憩中]

 〜♪ボンドのテーマが流れ,あの大風呂敷荒唐無稽話が大画面で展開される中,ひとり肩を震わせ声を発てずに爆笑していたが(日本語変),確かに大迫力の画面に音響である。ちなみに,劇場は売りの8番シアターではない。ハル・ベリーが発砲するシーンでは,隣の席のおばちゃん団体が「ひぃ!」と声を上げるあたり,間違いはなかろうて。実際,予告で観た『CHICAGO』『8Mile』をここらで観たらさぞかしライヴ感満点で,おなかいっぱいになるだろうなぁ,とひしひしと感じた。流石,道内一を自負するだけのことはあったのだ。

 しかし…

●うたげのおわりに●
 エンドロールが流れ,ぞろぞろと客達が帰路へつこうとドアを開けると,館内係員がゴミを一つづつ手にとり,分別してくれているではないか…はぁ,こりゃまたどぉも,ご親切に。この「至れり尽せり感」。実はチケット,おやつ購入時にも感じた,ファーストフードやコンビニにありがちな白々しい接客マニュアルの陰が色濃いそれは,慇懃無礼さすら感じさせるものだった。
 どこも同じだからどこに入ろうと安心…という風になれないのは,自分が古い時代の残骸だからか?…でも,24時間の1/8となけなしのお足を,館と作品に少なくとも捧げているのは,コツコツ観て来た映画ファンなんだけどね。最新設備と物珍しさで,確かにお客はしばらくは絶えることはないだろう。ただ,見慣れてくればいずれ飽きられる新しいものの宿命。
 同じような施設が出来ても,ここには愛着があるから,と言われるようにならないとさぁ。土地のホントの顔となるには,上っ面だけじゃないモノが必要になってくるんじゃないの?ここでしかやらないモノについてはしょうがない,観に来るけど,日参する程ではまだまだ…便利よりも魅力がもっともっと,欲しいよぅ。

 『タイタニック』『戦艦大和』を見よ,巨大戦艦は沈み易い…そんなことを考えながら人の波に紛れ,<JRタワー・ステラプレイス>を後にし〔スガイ〕(注5)年会員入会と〔シアターキノ〕(注6)のヴィンテージ会員に今年度もなったのだった。
 後日,隣接する<札幌大丸>について面白い話を耳にした。開店当初から入場者数の凄さを誇っていたが,客が落としていく一人頭単価が老舗デパートより少なかったというデータが地方ニュースで流れていた。その差,およそ6分の1。

おしまい

●札幌シネマフロンティアデータ●
札幌市中央区北5条西2丁目JRタワー・ステラプレイス/センター7F
TEL(問い合わせ):011-209-5402
音声・FAX24時間上映案内サービス:011-209-5400
URL:www.cinemafrontier.co.jp

《館内設備》
1番シアターDTS SRD SDR-EX 座席数160(1)
2番シアターDTS SRD 座席数121(1)
3番シアターDTS SRD SDR-EX [DLP] 座席数259(1)
4番シアターDTS SRD 座席数111(1)
5番シアターDTS SRD SDR-EX SDDS [THX] 座席数541(4)
6番シアターDTS SRD SDR-EX 座席数172(1)
7番シアターDTS SRD SDR-EX 座席数191(1)
8番シアターDTS SRD SDR-EX SDDS [THX/DLP] 座席数455(4)
9番シアターDTS SRD SDR-EX 座席数168(1)
10番シアターDTS SRD 座席数112(2)
11番シアターDTS SRD 座席数92(1)
12番シアターDTS SRD SDR-EX 座席数323(2)
( )内車椅子スペース

《各種サービス》
平日モーニング割(午前一回目上映)〜\1,200
レイト割(土曜日以外・20時30分以降上映)〜\1,200
レディースデー(毎週木曜日・女性)〜\1,000
シニア(60歳以上・年令証明必要)〜\1,000
ファーストデイ(毎月一日)〜\1,000

●文中注意書説明●
注1:道内商業施設内シネコンの先駆。北1東4サッポロファクトリー一条館2F URL:www.uci-j.co.jp/sapporo/
注2:東側は一般公募選出オブジェ[Legs](これ,足だったんだ)西側には大理石で出来た安田侃作[妙夢]がある。新待ち合わせポイントとなることうけあい。
注3:いわゆる鶏の唐揚げの道内での呼称。…でも,ザンギはザンギなんだよなぁ。
注4:THXシアター=ジョージ・ルーカスが製作者の意図する上映環境の基準を示し,その認定を受けたシアター。最高水準の音響が体験できる。DLPシネマ=フィルムを使わない,デジタルデータによる上映方式。劣化がなくいつ見てもクリアな映像。えー…これもまま掲載(笑)
注5:道内展開のアミューズメント施設。6・7・8Fが映画館=札幌劇場。南3西1スガイビル URL:www.sugai-e.co.jp/
注6:札幌市民出資のミニシアター。狸小路6南三条グランドビル2F URL:www.infosnow.ne.jp/~kino/

 

おわり


 ふろやnoのれん

 http://www.h3.dion.ne.jp/~night_16/

「ゆ〜だけ」がキーワードの札幌のゆえひささんのサイトは「趣味的映画感想」と銘打たれたもの。単にどんな映画か知りたい人も、より深くゆえひささん独自の見解に触れたい人も、それぞれ目的に応じた見方ができる親切な映画サイトです。


 

 

 

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