私が子供だったころ

 When I Was a Little Child...

 


 

LPデイズ その3

LP Days - Part 3

 

 前回までは中学時代に出会ったレコード群について語ってきたこのシリーズ、今回は珍しや高校時代まで話を進め、興味深い2枚組アルバムを二種類ご紹介します。

 

エルトン・ジョン「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」

 このアルバムは、実は中学卒業寸前に知人から借りて聴いたんですよね。それまでエルトン・ジョンのアルバムって全部通して聴いたことなかった。それでいきなり2枚組アルバムだから、どうかな〜って思ってたんですけど、これが凄く良かったんですよ。

 大体、僕って2枚組アルバムって大好きなんですよね。ビートルズだってホワイト・アルバムが好きだし。2枚組っていっぱい詰まって得した気分になるでしょう。ジャケットにも仕掛けしてあったりオマケついてたりすることが多いし。捨て曲みたいなのが入ってるのも、それはそれで楽しい(笑)。

 だけど、このアルバムはそんなの全くなかったですね。A面1曲目に針落としたら、そのままD面最終曲まで一気に聴かされちゃう。すごいエネルギーですよね。こんな2枚組アルバムってそれまでなかった。だからすっかり圧倒されちゃいましたよ。こんなのって、だいぶ後になってからブルース・スプリングスティーンの「ザ・リバー」が出るまでなかったんじゃないでしょうかね。あれも、一度聴き始めたら最後まで聴き通さずにはいられなかったし。

 とにかく曲がツブ揃いなんですよ。1曲目が「葬送」ってインストルメンタルなんですけど、これがシンセサイザーなんか使って大げさだな〜と思ってたら、いきなりアップテンポになって「血まみれの恋はおしまい」って次の曲になだれ込む。すると、次は「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」。これは元々はマリリン・モンローに捧げた曲なのに、後になってダイアナ妃が死んだ時に彼女の曲としてエルトンがまた捧げちゃって、歌詞まで変えちゃったんですよ。そりゃないだろうって思いましたね。みんなはダイアナ妃のテーマソングだと思って買ったんで、バカ売れしてヒットしちゃったけど、僕なんかこのアルバムのこの曲を聴いていたから最低だと思いましたよ。曲のアレンジもこっちの方が全然いいんです。悪いけどダイアナ妃版の方は気取り過ぎててイヤ。エルトン自身の歌も変なコブシ回しちゃって、演歌じゃないんだからヤメロって感じ(笑)。こっちのこの曲は素晴しい出来なんですよ。

 そしてシングルにもなった「ベニー・アンド・ザ・ジェッツ」。これがまたユルくていいんですよねぇ。こんな風にいい曲がつるべ打ちなんですよ。

 この時代あたりまでのエルトンってバンドのメンバーもプロデューサーも不動で、しかも曲も作詞のバーニー・トゥピンとずっと組んで書いていたんです。それが良かったんですよね。トゥピンの歌詞って独特の言葉のリズムがあって、それがメロディ楽器としてよりリズム楽器のようにピアノを弾くエルトンの曲づくり、演奏スタイルと相まって独特の雰囲気を出してた。バンドのドラマーのナイジェル・オルソンも、 ギターのデイビー・ジョンストーンも、独特のギコギコしたリズムでプレイしてて、それがエルトンのユニークなサウンドを生んでいたんですよ。

 そんなエルトンの黄金期の頂点がこのアルバムなんです。人気、実力ともにナンバーワンの時期。実はセールス的にはこの後の「キャプテン・ファンタスティック」やら「ロック・オブ・ザ・ウェスティーズ」なんかの方が上なんでしょうけど、質的なことまで考えるとこれが最高峰でしょうね。

 で、そこらへんでピークを迎えちゃって本人が追い詰められたか、マンネリだと感じ始めたかは分からないんですけど、エルトンはこの後でバンドのメンバーを大幅にいじくり回したり、プロデューサーのガス・ダッジョンをクビにしたり、事もあろうに作詞のトゥピンと縁を切ったりしたんですよね。一人でやれると思ったんでしょうか? これが完全に裏目で、それ以降エルトンは長い長い低迷期を迎えるわけです。その後、かつてのバンド仲間をゲストに迎えたり、トゥピンとまた組んだりしたんですけど、やっぱりかつての輝きは取り戻せないんですよね。

 このアルバムには、他にもアルバム・タイトルになったヒット・シングル「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」とか、もう1枚のシングル「土曜の夜は僕の生きがい」が入っているし、レゲエふうの曲とかカントリー風の曲とか、楽しさがギューヅメになっています。それは今聴いても全く変りませんね。

 

レッド・ツェッペリン「フィジカル・グラフィティ」

 僕が高校に入る入らないって時期は、それまで隆盛を誇っていたブリティッシュロックが、初めて沈滞を見せ始めた時期だったんですよ。不思議なもので、大物アーティストが軒並み活動を止めていた。イエスはキーボードのリック・ウェイクマンに逃げられる。エマーソン・レイク&パーマーは自主レーベル「マンティコア」設立のためか、やっぱり沈黙している。そういえばストーンズもこの時期に前後して、ギタリストのミック・テイラー脱退問題が持ち上がっていたんじゃないですかね。

 で、今回ご紹介するレッド・ツェッペリンも、前作「聖なる館」から長い沈黙を保っていたんですね。実は彼らもEL&Pと同じく自分たちのレーベル「スワンソング」を設立していたんですね。そして、そこからの第1弾アルバムを万を持して発表しようとしていた。それがまたしても2枚組アルバムだったわけです。

 で、これを買った友達から早速借り出したんですよ。実はこの当時の僕は、ツェッペリンは必ずアルバム買うほど入れ込んではいなかった。それでまず試し聴きしなくてはと思ったわけです。だって何しろ2枚組だから、失敗したらかなりキツイもんね(笑)

 ところでツェッペリンのファンでこのアルバムを一番いいって人は、実はあまりいないんじゃないかと思うんですよ。ハッキリ言ってこれって代表作じゃないですから。いろいろな曲が入ってて散漫な印象もあるし。でも、そこが僕には嬉しいところなんですよね。例のおトク感があるんですよ(笑)。

 いきなり「カスタード・パイ」って激しい曲でスタート。いかにもツェッペリンって感じの重たい曲もちゃんとあります。だけどそんな曲の合間を縫って、まるで当時流行の「ソウル・トレイン」風ファンキー・ミュージックを意識したかのような「トランプルド・アンダーフット」なんて曲も入ってる。だけどファンキーったってそこはツエッペリンだから、ドスバスとヘビーなリズムが刻まれてイマイチもイマニも軽快さに欠ける(笑)。まるでアフロヘアにキメていそいそディスコに踊りに行ったけど、体重が横綱級だからドスンバスンとシコ踏んじゃって踊りにならないみたいな感じ(笑)。こういうのなんて正統ツェッペリン・ファンなら噴飯ものなんだろうけど、僕なんかはイロイロやろうとしてるんだろうな〜って嬉しくなっちゃう。ジミー・ペイジの実験精神がアチコチに顔を出してて、それが全部が全部成功はしていないみたいで、ニンマリしちゃう楽しさ。このアルバムのツェッペリンは、僕らにぐっと近づいて来てくれる親しみやすい人達なんですよ(笑)。だから、そのバラエティに富んだ曲のラインナップも含めて、僕はこのアルバムが一番好きなんですね。

 そんなこのアルバムの一番の聴きどころと言えば、何と言ってもジミー・ペイジが大好きそうな中近東ふうサウンド爆発の「カシミール」という大作。この曲の重厚さに加えて、エキゾティックな香りが何とも言えない魅力。これ聴きたさに僕はアルバム買っちゃいましたもん。

 実はこれには後日談があって、例のローランド・エメリッヒによる悪名高いハリウッド版「ゴジラ」を僕が見に行った時のこと。映画が終わってエンドクレジットが流れると、どこかで聴いたふうなあの重たいリズムとメロディが…。あれっ? これって「カシミール」じゃないの?

 いやいや、よくよく聴くとそこにいかにも黒人らしい語りとも歌ともつかないツブヤキがブツブツと乗っかっている。つまりこれはヒップホップにありがちな、サンプリングってヤツなのかな。この黒人アーティストは、「カシミール」に目をつけてサンプリングしたに違いない。まさかハリウッド「ゴジラ」見て「カシミール」を聴けるとは思っていなかった僕は、何だかトクしたような気がした。そしてお楽しみはそれだけではなかったんですよ。

 エンドクレジットを見ていくと、どうやらこの「曲」ってジミー・ペイジ自身も参加してつくられているようなんです。何だ、単にサンプリングされたんじゃなくて、あいつ結構ノッて一緒にやったんじゃないか(笑)?

 その時、僕の脳裏には、あの「トランプルド・アンダーフット」の無茶なツェッペリン流ファンキー・ミュージックが、まさにフルボリュームで鳴り響いていたんですよね(笑)。

 

 

 

 

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