私が子供だったころ

 When I Was a Little Child...

 


 

ゴールデンハーフ

Golden Half

 

 

 フェリーニの「8 1/2」を下敷きにしたミュージカルの映画化NINE/ナインを見た時、思わず懐かしいメロディに遭遇したことは、その映画の感想文でもちょっと触れた。

 そう、「24000回のキッス」である。

 感想文にも書いたように、僕はこの曲を子供の頃に聞いていた。歌っていたのはゴールデンハーフ。…と言っても今の人はお分かりになるだろうか。日本人と外国人のハーフの女の子ばかり集めて作ったヴォーカル・グループである。決して「ニュー・ハーフ」のグループではない(笑)。

 しかし、何よりグループ名が「ゴールデンハーフ」だ(笑)。「ゴールデン」で「ハーフ」。この感覚がたまらない。今だったら差別とか何とか言われるのではないか。いや、それをとやかく言うのが差別というものか。だが、「ゴールデン」な「ハーフ」ってどういう事なのだ。「黄金ハーフ」…確か「怪盗ルパン」のシリーズに「黄金三角」とかいうお話があったが、それとも違う。

 早い話が「SBゴールデン・フォンドボー・ディナー・カレー」みたいな感じ(笑)。つまりはゴージャス感を出したかったのだろう。

 本当は5人のグループだったというが、すぐに4人になったという。僕が覚えているのは、すでに3人になった彼女たちだ。

 何で彼女たちを覚えているかと言えば、ドリフの「8時だヨ!全員集合」にレギュラー出演していたから。前半のコントには出てこなかったが、コントが終わってからの歌のコーナーでまずは登場。後半の合唱隊のコーナーにも出てきて、大ボケかましていたような気がする。

 確かメンバーはエバ、マリア、ルナ…だったはず。エバは一番コミカルな雰囲気のある女の子で、マリアは一番「ガイジン」っぽい顔をしていたような気がする。ルナはちょっとワルっぽかった気がするが、何せ子供心にイメージしたものだから心許ない。

 今、調べてみると、デビュー曲は「黄色いサクランボ」だったとか。子供の僕でも、当時すでに古い曲だと知っていた。「わっかいむすめがウッフ〜ン」ってな、歌詞からして古色蒼然たるシロモノ。そしてこれに始まるゴールデンハーフのディスコグラフィーは、僕の記憶が間違っていなければ一貫してカバー曲で占められていたのである。それも、最初の「黄色いサクランボ」こそ違うが、後はほとんど海外ヒット曲のカバーだった気がする。

 例えば「デ〜オ、デエエオ」という何だか分からない雄叫びで始まる「バナナ・ボート」とか、「マンボ・バカン」とか、「のってけのってけのってけサーフィン」ってフレーズが懐かしい「太陽の彼方」とかいうのもあったな。どれもこれも、当時の僕でも古いと感じる曲ばかりで、しかも海外カバー曲。こういう路線をやらせたというのは、彼女たちのバタくさいマスクに合わせたということもあったのだろうか。

 今みたいにJ-POPなんてのが確立していない頃、日本の作曲家がつくる曲はどれもこれも演歌っぽくて垢抜けていなかった。「バナナ・ボート」が垢抜けているとは言わないが、とにかく日本の歌みたいにしみったれてはいなかったはずだ。今ならエイベックスとかからデビューさせてソウルっぽく売ることも出来ただろうが、当時の渡辺プロにはこういう戦略以外発想できなかったのだろう。

 ただし女の子のヴォーカル・グループといっても、歌はまったくハモりなしの主旋律のみユニゾン歌唱。今じゃ信じられないだろうが、日本のヴォーカル・グループってそうだった。キャンディーズやピンクレディーがサビの部分をハモるようになったのは、ずっと後のことだ。もっとも、いまだにSMAPとかは恥ずかしげもなくユニゾンでやってるんだから、笑ってる場合ではないのだが(笑)。

 問題の「24000回のキッス」だが、僕がこの曲を聞いたのも「全員集合」でのこと。「NINE/ナイン」で流れたのは、これのイタリア語による原曲ということになるんだろう。もっとも日本語版を歌ったのはゴールデンハーフが最初ではないようで、つまりゴールデンハーフ・バージョンは日本語版としてもカバーということになる。

 どんな歌かについては、知る人も今は少ないはず。ここでちょっとだけ紹介しよう。アップ・テンポのノリのいい曲で、メロディにちょっと哀愁漂っているあたりがユーロ歌謡風、イタリアン風味とでも言おうか。ゴールデンハーフはこの曲の間奏部分で、なぜかカンフー・アクションみたいな振り付けを見せていた。当時まだ「燃えよドラゴン」は制作すらされていないはずだから、アレは何だったのだろう。ひょっとしてブルース・リーの先取りだったのだろうか(笑)。

 そして歌詞がまた何とも面白くて、「1秒のキッスを1日続ければ24000〜」という不可解なフレーズが登場する。サラッと聞くぶんには気づかないのだが、よくよく考えてみると1日は24000秒ではない(笑)。当時の僕はまだ子供だったから、キスを1日ずっとしていたら1回にしかならないので、口を離してる時間もあるはず…と、妙なところで「24000」の根拠を自分なりに納得させようとしたりした。それでもこの数は説明つかないけどねぇ。とにかく、当時の僕はくっだらないことを考えていたわけだ。

 それにしても、これを堂々とレコードにして、しかも公共の電波に流してしまうとは…それもタイトルに堂々とうたってしまっているのだから、言い逃れができない。相当な強心臓だ。

 そして、これはさすがに日本でカバーした時にデッチ上げたタイトルだろう…と、「日本人ってみっともねえなぁ」と思っていたのだった。

 さて、その後のゴールデンハーフだが、僕の知っている限りでは彼女たちの活躍はあまり長くはなかった。グループ解散後、一番面白かったエバはバラエティ番組みたいなのにちょっと出ただけですぐに消えちゃったし、ルナは日活ロマンポルノに主演した後、脱ぎ専門みたいな感じになってこれまた長続きしなかった。最も長持ちしたのがマリアで、一番ガイジンっぽい顔立ちだったのになぜか時代劇ドラマのお庭番みたいな役ばかりで登場。子供心に不思議な気がしたが、それも今は昔の話だ。

 今では、「ハーフ」を売りにタレント稼業やっていくのも難しいんだろう。

 ところで先ほどの「24000回のキッス」に話を戻すが、このお恥ずかしいタイトル、オリジナルではどんなものだったんだろうとずっと気になっていた。

 しかし「NINE/ナイン」でチラリとその原曲を耳にした僕は、ついにこの長年の疑問を解く瞬間がやってきたと気づいたのだった。そう、映画のエンディング・クレジットだ。ハリウッド映画なら、最後に本編より長いくらいのクレジットが並ぶのが恒例。当然、使われた楽曲のタイトルや歌手・作曲者名なども表記されるはずだ。僕はイタリア語は分からないが、ひょっとして目を凝らして見ていれば、「それ風」なタイトルを見つけることができるのではないか。

 映画が終わってエンディング・クレジットが流れる間、僕は映画本編よりも目を見張って、一字一句も見逃さない気持ちでスクリーンを凝視した。すると…。

 あったあった!

 たぶんコレだと思うタイトルを見つけた僕は、それをメモして慌てて劇場を出た。そしてネットの翻訳ソフトで早速訳してみたわけだ。

 その結果は? お教えしよう。イタリア語ではそのタイトルは「24 MILA BACI」

 日本語に訳せば…「24000回のキッス」(笑)

 なんでやねん(涙)。

 

 

 

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