私が子供だったころ

 When I Was a Little Child...

 


 

パンナム

PanAm

 

 パンナム…と聞いて、今の若い人はどれだけわかるんでしょうね?

 パンナムは、パンアメリカン航空。アメリカ最大…つまりは世界最大級の路線を誇っていた航空会社だったんですよね。それは確か1980年代前半までそうだったはず。

 世界のどの国でもナショナルフラッグカンパニーというか、国を代表する航空会社を持っていて、例えばエールフランスやらアリタリアとかカンタスとか。日本ではジャルこと日本航空がそれですよね。

 アメリカでは確かにある時期まで、パンナムがその役割を確実に果たしていたわけなんですよ。

 例えばある時期まで、相撲の千秋楽の時に優勝力士に表彰状とトロフィーを渡す役割として、紋付き袴姿で「ヒョ〜ショ〜ジョ〜」と変な日本語でスピーチする外国人のオジサンを見ませんでしたか? あれが当時のパンナム日本支店長。パンナムは大相撲にかなりお金をパトロンとして注ぎ込んでいたんです。つまりは、パンナムが日本におけるアメリカ民間外交の大きな部分を担っていたこともあったわけですね。

 でも、わが国ではテレビの海外旅行番組として異常なまでの長寿を誇った、「兼高かおる世界の旅」の協力企業としてのほうが、さらに有名だったかもしれません。これは最初三井グループの提供だったかな? 映画「80日間世界一周」のテーマ曲に乗って始まるこの番組は、昔は海外旅行など夢のまた夢だった日本人に、世界中の珍しい風景や人々を紹介していきました。そのレポーターは、今で言えばスーパー・バイリン・キャリアウーマン(笑)の兼高かおる。だけど考えてみると、この人のキャリアって実は誰もよく知らない。そういう意味では、失礼ながら今をときめく叶姉妹並みに怪しげな存在と言えなくもないんですけど。…一緒にしては失礼か(笑)。そして世界中を駆け巡る彼女とともに、いつもパンナムのマークがあったわけです。あの飛行機に乗れば世界中どこでも行けるんだな…これ以上わかりやすいマインドコントロールはありません。日本人にとって、昔は海外旅行と言えばジャルかパンナムしかなかったんですよ。

 あと映画からの例えで言えば、「レイダース/失われたアーク」と「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」の2作でチラリと出てくる旧式の旅客機は、すべてパンナムのものなんですね。

 そして、もっと有名な例で言えば、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」で、地球〜月間を飛ぶスペースシャトルにパンナムの社名が入っていましたっけ。そのくらい、パンナムはアメリカ筆頭の航空会社であり、1968年当時から見れば不動の位置にあると思われていたんです。

 ところがアメリカでは国の航空政策が変わって、航空各社はかなり激しい競争にもまれるようになってしまったんですね。そこで図体が大きくて小回りがきかない、贅肉ばかりのパンナムはひとたまりもなかったわけです。

 経営不振に陥ったパンナムは、世界に広がる路線網を切り売りしていったんですが、ドル箱の太平洋路線を買い取ったのがユナイテッド航空。

 当時、実は航空業界の末席を汚していた私も、貨物のラベルやら書類やらをパンナムからユナイテッドに切り替えていったあの頃は、感慨深いものがありましたね。

 最近はバカンスを国内でより海外で過ごすほうが多くなってきた日本人、しかし海外渡航者が爆発的に増えていったその時には、パンナムの名声はもうなかったんです。

 その後、パンナムはどこかで細々とやっているのか、すでにツブれちゃったのか。ヒコーキ商売から足を洗って久しい私には、もう知る由もありません。

 さすがのキューブリックも予測できなかったパンナムの没落。今の、そしてこれからの若い人は、「2001年〜」のパンナム・ロゴを見てどのように感じるんでしょうか?

 

 余談ですが、「兼高かおる世界の旅」の最末期は三洋電気提供。協力はSASスカンジナビア航空と明らかに格落ちの様相が濃厚で、何とも寂しい思いがしたものです。

 

 

 

 

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